企業版ふるさと納税
平成28年度税制改正において、「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)」が創設されました。
この制度は、地方公共団体が行う地方創生のプロジェクトで国が認めたものに対して、企業が寄附を行った場合に、税額控除の措置を受けることができるというものです。
その地方公共団体が実施するプロジェクト(「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」)の初めてとなる認定事業が、この夏まもなく決定・公表される予定です。
企業版ふるさと納税のポイント
1.企業版ふるさと納税は、今までの2倍の節税効果がある
これまでの寄付税制でも、地方公共団体への寄付金は、全額損金(法人税法上の経費)算入することで約3割の節税となる制度でした。
H28年の税制改正ではさらに、下記②と③が新設され、税額控除できることになりました。
《H28年企業版ふるさと納税の節税額 》
①寄付金額の全額を損金算入することで約3割の節税…国税・地方税
②寄付金額の2割を税額控除…法人住民税・法人税
③寄付金額の1割を税額控除…法人事業税
合計で約6割の節税額となり、実質負担は寄付額の約4割ということになります。
2.寄付金の最低額は10万円
個人のふるさと納税での最低寄付金額は2000円ですが、企業版ふるさと納税の最低寄付金額は10万円です。
3.寄付できる地方公共団体に制限がある
企業版ふるさと納税は、寄付できる地方公共団体に制限があります。
まず、自社の本社(主たる事務所)が所在する地方公共団体に対する寄付は対象外です。
また、地方交付税の不交付団体でないことが条件となっています。
つまり、財政的に豊かな地方公共団体への寄付は対象外ということになります。
なお、地方交付税の不交付団体は、H27年度については東京都と59の市町村となっています。
(愛知県では、碧南市、刈谷市、豊田市、安城市、小牧市、東海市、大府市、日進市、みよし市、長久手市、豊山町、大口町、飛島村、幸田町であり、三重県では川越町)
4.寄附を行うことの代償として経済的な利益を受けることは禁止
ふるさと納税は、
①地方公共団体が、「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」を企画立案し、企業に相談を行い、寄附の見込みを立てる。
②その事業について地方公共団体が、国(内閣府)に申請、内閣府がこの事業を認定・公表する。
③地方公共団体は認定を受けたその事業を実施し、事業費を確定させる。
④企業が寄付の払い込みを行う。
という流れになるため、特定の企業と地方公共団体との癒着などのないよう、企業版ふるさと納税では、 寄附を行うことの代償として経済的な利益を受けることが禁止されています。
また、もし特産品等を受け取った場合は法人から法人への贈与となり、「受贈益」を計上する必要があります。
(100,000円寄付し、特産品を時価50,000円相当受け取った場合、100,000は会計上経費、50,000円は受贈益となる)
5.寄付を行う時期
この制度は、企業が黒字で法人税等が発生する場合において、その法人税額の決められた範囲内で節税できるものですので、当然ですが、赤字の期に寄付をしても節税効果はありません。
また寄付をすることで節税効果はありますが、会社に残るキャッシュは減ります。
個人のふるさと納税は節税の他に、特産品が贈呈されるという特典が注目されていますが、企業版ふるさと納税は、社会貢献活動として行われる他、地方創生に貢献することによる企業のイメージアップなどのPR効果が特典となりそうです。