H26年 査察の概要
平成27年7月に国税庁から平成26年度(平成26年4月1日~平成27年3月31日)査察の概要が発表されました。
査察とは、税務調査が任意調査なのに対して、強制調査であり、国税犯則取締法に基づいて行われ、脱税と判断された場合は検察庁に告発されるものです。
国税庁ホームページによると、査察の状況は下記のとおりです。
1.告発件数、告発率、脱税額
査察に着手した件数・・・・・・・・・・・・・全国で194件(名古屋国税局管内 20件)
平成26年度以前に着手した査察事案について、平成26年度中に
処理(検察庁への告発の可否を最終的に判断)した件数・・・・・・180件(名古屋 16件)
そのうち検察庁に告発した件数・・・・・・・・・・・・・・・・・112件(名古屋 8件)
告発率・・・・・・・・・・・・・・・・62.2%(名古屋 50.0% )
査察事案に係る脱税額・・・・・・・・・総額で150億円(名古屋 14億4,900万円)
そのうち告発分・・・・・・・・・・・・123億円(名古屋 8億1,600万円)
告発した事案1件当たりの脱税額・・・・・・1億1,000万円(名古屋 1億200万円)
でした。
【国税庁HPより→】
査察が入ると立件される確率は約60~70%です。
立件されるとほぼ100%有罪となります。
2.脱税の手段・方法
告発の多かった業種は下記のとおりです。【国税庁HPより↓】
告発の多かった業種における、多かった脱税の手段・方法は、
(1)不動産業・・・売上除外や架空の経費を計上していた
(2)クラブ・バー・・・ホステス報酬に係る源泉所得税を徴収していたにもかかわらず納めていなかった
(3)建設業・・・架空の原価を計上していた
そのほか、
①輸出免税売上に対応する課税仕入の消費税が還付になるため、架空の課税仕入とこれに見合う架空輸出免税売上を計上する方法で不正に還付を受けていたもの
②海外の仕入先に架空のインボイス(商品を輸出する際の送り状)を作成させ架空仕入を計上していたもの
③複数の納税者に脱税を持ち掛け成功報酬を得ていた、いわゆる脱税請負人関与事案では、架空の事業損失を計上して所得を少なくする方法を給与所得者に指南して還付申告を行わせていたもの
④多額の利益がありながら、故意に税を免れようとして、法定申告期限までに申告書を提出しなかったことから、単純無申告ほ脱犯(平成23年度創設 ※)を適用したもの
などがありました。
3.不正資金の留保状況及び隠匿場所
脱税によって得た不正資金の多くは、現金、預貯金、株式及び不動産として留保されていたほか、次のような事例がありました。
①高級外車や腕時計の購入
②競馬などの遊興費
③特殊関係人に対する資金援助
④老人ホームの入居権利金に充当
⑤海外の預金で留保
⑥海外のカジノで費消
脱税によって得た不正資金の隠匿場所は、
「自宅階段下の納戸の一番奥に置かれた段ボール箱」
「自宅寝室のベッドのマットレス下に保管されたスーツケース内」
「洋室の棚の下に置かれた段ボール箱」
に現金を隠していた事例などがあったそうです。
※単純無申告ほ脱犯
FX取引等で巨額の所得を得ながら税逃れのために故意に申告を行わず、結果として多額の税を免れるケースがあったことなどから、平成23年度税制改正でこの新しい「故意の無申告」の罰則が登場した。
これにより、税逃れに関する犯罪類型は、「脱税」、「故意の無申告」、「単純無申告」の3種類となった。